ハコイリ♡ムスメ『ハコイリ♡ムスメ定期便3月号~3月の静かな決意~』@AKIBAカルチャーズ劇場(20150322)

 ハコムス終わります! 嘘です! ハコムス第1章が終わります(©小松もか)。そして、新しい物語が始まります。


 そもそもいつかは終わるものです。今のアイドルシーンは飽和しすぎて、生き残るには酸素が薄すぎるし、こんな焼け野原でどうしても頑張らなければいけない理由があるのか、疑問に思います。これからアイドルを始めようとするところが未だにあるのは何故だろう。しかし抗えない魅力があるのも確かで、小さなステージでも眩い瞬間は存在し、だから僕も追いかけるのです。アイドルも仕事だからとか悲しいことは言わないでね。


 去年の夏から活動を続けてきたハコイリムスメも、メンバーは基本的に女優さんなのだから、風向き次第でいつ消えていなくなっても不思議ではありません。2月に観た『はじまり』、その公演の最後に告げられた不穏な告知と、メンバーの神妙な顔を見たらどうしたって不安が湧き立ちます。いちばん恐れていて、尚且つありえそうなのが、最年長メンバー門前亜里さんのハコムス卒業でした。4月からは高校3年生であり、人生の重大な岐路に立つわけです。それに合わせて辞めてしまうのか。なにより『はじまり』で見せた門前さんの別れのシーン。悲しい予感しかありませんでした。対バンライブの告知などで4月以降もハコムスの活動が続くことは判明しても、依然たくさんの不安を抱えたまま、3月の定期公演を迎えました。3月は題して『静かな決意』。皆、向き合わなければならない未来があり、進まなければならない道があります。僕は受け入れることができるでしょうか。


 静かな決意は『ホワイトラビットからのメッセージ』と『Snow celebration』で幕を開けました。1曲目からびっくりするほど気合いが入っています。繊細に世界を描くという、いつものハコムスらしさを超えて、彼女達のこの公演に対する強い想いが伝わってきます。今回のホワイトラビットは小松もかさんセンターでした。小松さんはリーダーなのに普段はふにゃふにゃしてて、そんなふにゃもかを周りが支えてあげることで結束力を高めるタイプの人物ですが、この曲では堂々とした立ち振舞で、誰が歌ってもホワイトラビットはいいなと思わせるものでした。やっぱりふにゃもかにもスイッチがあるのでしょうね。2曲終わってからの自己紹介で、内山珠希さんがお決まりの「おはたま~♪」と言って、他のメンバーが失笑しちゃう流れ笑えるけど、ハートの強い珠希さん大好きですよ。


 自己紹介後はユニット曲、秋の3曲を劇団ハコムス無しで披露でした。『星座占いで瞳を閉じて』は、間奏で椅子に座って何かを読んでいる神岡実希さんに我妻桃実さん(ぽにょ)がちょっかいを出すのですが、そのときの2人から自然に出てくる声がマイクを通さずに聞こえてくるんですね。それすらも台本で用意されてるのかもしれませんが、その声が窓から校庭を眺めている僕の後ろで聞こえてくる声のような、同じ教室にいるのに遠い世界の喧騒のような雰囲気がありました。なんかそんな美化された若い頃の景色思い出したわ…。でも、実際あれベンチですよね。『パジャマでドライブ』は、またあの静かな情景を見られて感無量です。今日も変わらず菅沼もにかさんは可愛い。『日曜はダメよ』はバレエの振付が少し変わってましたね。やっぱり珠希さんの歌声が好きです。ハコムスの歌の芯は珠希さんだと再確認。珠希さんはおそらく歌い上げる系の曲が好きなんだと思うけど、そこを敢えて抑えて優しく語りかけるような歌声が僕は大好きです。続いての『Be My Diamond』は、歌い続けていくにつれハコムスを代表するようになった曲。ぽにょが一列に並んで踊るシーンが人間が進化するみたいと評していて、なるほどと思いました。解釈は様々ですが、僕にはハコムスの姿が、美しく羽ばたいて空高く舞う渡り鳥の一団に見えます。ハコムスも自信を持って披露しているこの曲が僕は大好きです。このサビでの小松さんが本当いいんですよ。珠希さんの歌声に乗せて踊るふにゃもかを見てると、張り詰めた心も自然と和らいできます。


 そして、ハコムスの皆さんから大切な発表がありました。再び緊張です。以下に発表の内容を並べましたが、結構いっぱいあった。発表溜め過ぎ。

  • 全曲新曲の新セットリスト
  • 春の新衣装
  • 新メンバー追加
  • ハコムス初のオリジナル曲

だったかな。どれも4月の定期公演が初披露のこと。


 発表に至るまで、後ろで過去映像を流しながらメンバーが一人ずつこれまでの出来事を淡々と語っていきました。いろいろなシーンが甦り、皆さんの笑顔や泣き顔が頭をよぎります。なんかもう卒業式みたいだ。全員で過去を振り返り、最後にリーダーの小松もかさんからハコムス第1章の終了、4月から第2章の始まりが告げられました。正直ホッとしています。メンバー追加で新しいハコムスにはなりますが、誰も辞めなかったのはうれしいことです。いつかは来るのだろうけど、その日はできるだけ考えたくないですよ。あと、オリジナル曲ができるのが本当にうれしい。去年の夏から待ち望んでいたことです。他の誰のでもない自分達のアイデンティティとなる曲が1曲でもあれば、それがグループの支えとなってくれるはずです。


 大切な発表を終え、未来を隠していた雲が消え去りハコムスとファンが同じ地平を見ることができたところで、定期公演のメイン演目劇団ハコムスでした。卒業式の日を舞台に紡がれる様々な別れと旅立ちの物語。2月とは違う、不安はあるけど希望に満ちた明日があることを全員が共有した今の劇団ハコムス、とても素晴らしかったです。最初のシーンが神岡実希さんと門前亜里さんの2人なのですが、その時点で神岡さん感極まってました。やばいよ、演技どころじゃないよ…。ファーストシーンからこれでラストどうなるんだ…。前回見られた転換のもたつきが、ステージを左右で分けたり、大道具である机の移動を少なくしたことでテンポよく話が進んでいくようになっていましたね。アイドル活動のため転校する菅沼もにかさんと、アイドルになりたいけど覚悟が足りなくて弱気な内山珠希さんのやりとりも、前回に増してグッときてしまいました。珠希さんの夢を追いかける勇気の無い陰りから、一歩踏み出す場面に泣きそうになったよ(泣かなかったけど)。


 直前の発表のおかげで気持ちは昂り、劇の始まりから全力で泣かしにきて最後にあの2人です。ハコムスきっての演技派である門前亜里さんと役に入り込めば誰よりもその場の空気を掌握する鉄戸美桜さんが、厳かな別れと旅立ちの日を締めくくります。僕自身、去年の秋に鉄戸さんによるしずかちゃんパパの演技を観てハコムスに一層のめり込んだので、再び演技の神様が降りるかと緊張してステージに集中しました。


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 すごかった。これ以上無いってぐらい透きとおってました。涙でできた階段を一歩ずつ上って、その高みから未来の自分を描いているような決意に満ちた門前さんの視線。ひたむきに門前先輩を想う鉄戸さんの、瞳から零れる波紋に溺れそうになります。できることならもっと傍らで見たかった。泣きすぎだったのはしょうがないですよね。誰だって抑えきれないと思う。


 門前亜里さんが遠く、遥かなる先を見つめながら呟いた「はじまり」の言葉と共に始まった『はじまり』。これほどまでにすうっと優しく静かに沁み渡ってくる感動はあるだろうか、と思えるほどでした。この歌こそが静かな決意なのでしょう。過去2回聴いて、その不安定で揺れる細さから聴く度に守ってあげたくなる気持ちを抱かせた門前さんの歌声が、この日は強く遠くまで伝わってきました。大切な発表に立ち会い、僕も安心できたからそう聴こえたのかもしれません。過去に別れを告げ、今を受け止め、未来を信じる歌声がそこにありました。ハコムスの今と歌詞が重なり合って広がる物語に感動しました。


 まあ、なんというか、お客を集めるためとはいえ散々不安を煽るのはどうなのかなと思います(もしかして煽られたの自分だけ?)。『はじまり』では門前亜里さんが皆に送り出されるストーリーがあります。完全にこちらの勝手な思い込みでしかないけど、間奏で皆と別れを告げてひとり佇む門前さんを見ていると、彼女が辞めてしまうかもしれない不安が否が応でも生まれてきます。これは確信犯です。2月に僕も狙い通りにやられました。だけどね、冗談でも辞めること前提のリプライ送るのはどうかと思うよ…(他人のリプライを覗いた自分も品がないけど)。果たして、穏やかならざる1ヶ月を過ごした末に聞いた発表は、喜ぶべき発表ばかりでした。門前さんは辞めなかったし、僕を悲しませる発表はひとつもありませんでした。結果的に、僕から見たら門前さんはそういう役を演じていました。嘘をついてはいないけど、上手かったねと皮肉を言われても仕方のないやり方です。そう思われてしまうことについて門前さんはどう感じたのだろうか、気になります。そこは徹するところがやはり女優魂なのかな。このような、メンバーに要らぬ負荷をかける方法に遭遇すると、昔ももクロのれにちゃんが激やせした件を思い出します。女の子の体重についてとやかく言うことがそもそもどうなのと思うし、そこで拒否反応を示さず運営の策に飲み込まれ、加担した自分としては、あのときのような過ちを繰り返したくはありません。門前さんはどう思っているのか、こちらは預かり知らぬところですが、僕はこういうのが好きじゃないです。結局のところ、僕が病むだけで本人あっけらかんとしてるなら問題無いですが…。想像してる以上に強いのかな。わからない。


 話を戻します。『はじまり』を歌い終えて、ハコムス第1章の最終ページに達した皆さんが緊張から解き放たれ、ふと気が緩みそうになった瞬間を突いて小松もかさんが喋り始めました。こまっちゃんの明後日は何の日~、ということで鉄戸美桜さんの誕生日を一足お先にお祝い。鉄戸さんは、マネージャーから鉄戸の生誕祭無いからと言われていたそうで、普段から涙脆いのに当然のようにボロ泣きです。ケーキと一緒に大好物のかまぼこが出てきて泣き笑いの鉄戸さん可愛すぎます。この日の鉄戸さんは際立って素敵でした。その美しさは、生誕無いよと言われていても微かに期待していた美しさかもしれません。にしても鉄戸さん輝いてた。。


 鉄戸美桜さんは生誕で既にお腹いっぱい大満足でこのまま終わってもいいと言ってましたが、まだ最後の1曲が残っています。公演最後の曲は『ありがとう!おともだち。』でした。アイドルネッサンスとの2マンで披露されたこの曲、正直なところ、ハコムスだけでやることは無いだろうと思っていました。だからびっくりしたし、ハコムスだけでもこんなに楽しい歌なんだとさらにびっくりしました。ステージ上で元気いっぱいに歌い踊るハコムスの皆さんの笑顔が眩しいです。たまにはこういう笑顔溢れる曲もいいですよね。笑ってる門前亜里さん大好きだなあ。1年にも満たない活動期間ですが、見えるところ見えないところでいろいろな出来事があったはずで、たくさんの壁を乗り越えて団結力を高めたグループにこの曲はとても相応しいと思います。Berryz工房のように長く絆で結ばれるグループになってほしいですね。


 第1章の締めくくりとしてこれ以上ない、素晴らしい公演でした。単純に、春も出会えるということがとてもうれしい。本当にうれしい。ここでハコムスはひとつの区切りをして、4月から新たな1ページを描き始めます。新メンバーも入り、どうなるのか心配でもありますが、さらなる飛躍の可能性に満ちていると思います。新緑に映えるハコムスを早く見てみたい。意味も無くスキップしたくなる季節になったら、カルチャーズの地下を飛び出して公園にピクニックとかしたいですね。


 3月の公演も、夏からこれまでの第1章も、素敵な時間をありがとうございました。季節が移り変わっても、ずっとハコムスの笑顔が見れたことはとても幸せなことです。皆さんとはたくさんの思い出で溢れています。第2章も心に残る瞬間を数えきれないぐらい過ごせたらなと思います。この公演の後に、一緒にハコムスを見た友人達と散歩をしていたら桜を見かけました。美しい桜でした。鉄戸美桜さんに限らず、ハコムスの皆さんは今でも全員美しく咲いています。だけどまだ、可能性のつぼみは皆さんの内にたくさん秘められています。もっともっと大きく、空高く満開に咲かせましょうよ。


 ハコムスの皆さん、今までありがとう。そしてこれからもよろしく。