乃木坂46『墓場、女子高生』初日2日目雑感

 乃木坂46が本格演劇に挑戦する第二弾、『墓場、女子高生』を観てきました。現状、私が観たのは初日と2日目ソワレ。

「いつでも思い出し笑いできるような出来事が、
確かにいくつもあったんだけど…、」

 
学校の裏山にある墓場で、
合唱部の少女達は今日も授業をサボって遊んでいる。

墓場にはいろんな人間が現れる。
 
オカルト部の部員達、ヒステリックな教師、疲れたサラリーマン、妖怪、幽霊…。

墓場には似合わないバカ騒ぎをしながらも、 
少女達は胸にある思いを抱えていた。
 
死んでしまった友達、日野陽子のこと。

その思いが押さえきれなくなった時、少女達は「陽子のために…」、
「いや、自分達のために」とある行動を起こす。

「墓場、女子高生」


natalie.mu




 笑った。超笑った。そして泣いた。どこにでもありそうですぐに忘れてしまいそうな瞬間の連続が積み重なり、いつかは漠然と青春と呼ばれるようになる時間。忘れてしまう時間と忘れられない人。これが青春なのだろうか。青春らしい青春を過ごしてこなかった自分には、昔を思い出すということもなかったけれど、そこには狂おしいまでの青さが生と死のすぐ隣にあって、それがさらに青春を際立たせていた。


 私は去年、ベッド&メイキングスによる再演『墓場、女子高生』を観ました。それが本当に最高だった。死んでしまった者を常に想いながら、しかし繰り広げるはどうでもいい時間。主演の清水葉月さんが素晴らしくて、ただ墓場を歩いているだけでも幽霊としての存在感があった。雰囲気を作れる女優さんだった。あのときも笑って泣いて、観終わって外に出ると夏で、どうしようもなく切なくなったのを覚えています。


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 そして今回、乃木坂46のメンバー8人を迎えての『墓場、女子高生』です。去年が最高だったので、もしかしたら乃木坂が演じることによって面白さが減ってしまうのではないか、そんな不安がありました。女優することに熱心な乃木坂であっても、本業はアイドルですからね。アイドルが出る舞台は面白いか基本的に不安なんですよ。しかし(ここフォント大きく)、そんなことは杞憂でした。乃木坂46の『墓場、女子高生』、素晴らしかったです。笑いと涙の狭間を揺らいで、青春の不安定さを見事に描かれていた。あと去年は下ネタ多かったなーと思い出したけど今回も下ネタ突っ込みまくってました。


 どうしても去年の再演と比較してしまうのは申し訳ない。しかし比べることで新しさも見えてきて、自分の中に出来上がっていた『墓場、女子高生』のイメージを壊してくれました。特に主演の伊藤万理華さん。去年の『墓場、女子高生』を観た後、私には清水葉月さんが演じる日野ちゃんがいるからこそ『墓場、女子高生』が成り立っているとしか思えず、清水葉月さんしかありえないと思っていました。今回日野ちゃん役(皆いろいろな愛称で日野のことを呼んでいますが私は「日野ちゃん」です)が伊藤万理華さんだと知ったとき、清水葉月さんで作られた私の中の『墓場、女子高生』のイメージをどう崩してくれるのだろうと楽しみであり不安でもありました。


 そんな複雑な気持ちで迎えた初日。伊藤万理華さん演じる日野ちゃんは孤高でありながらも親しみのある女子高生となって舞台の上に立っていました。それは伊藤万理華さんだからこそ、乃木坂46の8人が演じているからこそ成り立つ日野ちゃんでした。日野ちゃんは伊藤万理華さんなのに、他の7人もその背後に感じられて、全員で舞台を作り上げているんだなという感動がありました。やっぱりこの8人なんですよ。


 以下それぞれについて。ネタばれしています。

合唱部の面々に何も告げずに自殺してしまう日野ちゃん。日野ちゃんはどんなに仲の良い友達にも見せない秘めた部分を持っていて、それが日野ちゃんの神秘性を高めています。去年観たときは日野ちゃんの不可侵で神秘的なわからなさが自殺してしまったことに対する言い訳にもなっていたように感じました。他の7人から見てやっぱりあの子は不思議だったねみたいに去年は思えたのだけど、今回は伊藤万理華さんなわけです。普段は他の乃木坂7人と一緒に仕事をしているわけです。現実とは違う舞台を観ているはずなのに、その後ろに乃木坂が透けて見えざるをえない。乃木坂の8人が演じているということがどうしても意識の底にあって、それがお話自体が生み出す関係性以上の絆を私に感じさせて、演劇としてそういう見方はどうなのかなと思いつつも、それこそが乃木坂46が『墓場、女子高生』を演じる意味のような気もして、複雑ながらも日野ちゃんとそれぞれの関係にのめり込んでしまいました。で日野ちゃんは、伊藤万理華さんであり8人でもあるのです。だから死別がより悲しく、残された者のやりきれなさが墓場に充満していてあの馬鹿騒ぎなのだと思います。

ビール飲んだりして大人ぶっているのに純情なの可愛すぎでしょ。日野ちゃんは死んでしまった存在でいないも同然なので、必然的にメンコが主役のような雰囲気がありました。陽であるメンコと陰の日野ちゃん。生き返った日野ちゃんに対して言葉が少なくなるメンコの佇まいが物語を強くさせていました。メンコがうんこの話を日野ちゃんに迫るところ、うんこの話なのにめっちゃ泣けるんだ。

ビンゼは途中から合唱部に入るという設定なのだけど、そもそも新内眞衣さんは乃木坂のメンバーだという認識があるので、なんというか新入部員感が薄いんですよね。あと、一気に時間が戻って合唱部に加入するときの場面に転換する流れは気持ち良い。あの出会いから回想に変わるところも切なくて好きです。時間は流れているのに過去に戻って再び今に跳ぶ。この舞台は最初夏の話かなと思っていたのに、実際は四季を巡っていて、それが彼女達の制服の着こなしにも表れていて、だからこその最期のシーンが印象的になっていました。

斉藤優里さんっぽい。自分のことをブスブス自虐するのですが、全然ブスじゃなく可愛いのが辛い。ブスブス自分では言ってても本当は可愛いと言ってもらいたいのに、ジモにはそこそこ可愛いと絶妙にけなされてるの可愛い。悪口さえも愛おしくなるこの距離感がいかにも青春ですね。ただまあ乃木坂の人がブスブス言ってても全然説得力ないの悲しい。ブリっ子してるナカジ可愛いよ。

誰も彼も純情なんですよ。おっさんが書く女子高生だから純情なんですよ。荒い言葉遣いであっても乙女心はあって健気なチョロ可愛いし、チョロの足開き気味な感じ、嫌いになれないよ。

すごかったよ!! 私の知ってた鈴木絢音さんではなく、女優の鈴木絢音さんでした。明るいんだけど捻くれていて、何事にも突進していくようで一歩退く雰囲気も持っていて、本当にジモだった。踊っているときに腰が低くなる感じ、ジモっぽくていいなと思いながら観ていました。最後のコーラを飲むシーンに青春の刹那が詰まりまくっていて、その瞬間、それまでの2時間はこのジモのシーンのためにあるんだなって思えるくらい素晴らしくて泣いた。

舞台が始まる前、オカルト部を誰がやるだろうか楽しみだったのです。誰がやっても面白いことに間違いないことは確信していましたが、伊藤純奈さんがオカルト部を演じることを知ってかなりびっくりしました。なにせ今回の演者の中で数少ない現役高校生なわけです。それがこんな色物な役を演じるなんて。しかし、武田様最高でしたね。どんなに奇抜でも本人が笑わせようとしていない本気だから生み出せる笑いが最高だった。

こちらも難しそうな役だった。最初オカルト部で登場して、後から元は合唱部だったことがわかる西川。いちばん日野ちゃんの心の核心に迫っただけにいちばん突き飛ばされてしまった西川。なんとも悲しい。日野ちゃんと西川の会話が、いつも伊藤万理華さんと井上小百合さんで話しているのと同じような雰囲気があった(プライベート知らないけど)。いいことなのかどうなのか、歩き方とか仕草に時折井上小百合さんが感じられるんですよ。だから日野ちゃんこと伊藤万理華さんと死に別れたことが本当に辛くて、2回目に観たときはオカルト部の格好で出てきたときから辛かった。

  • 大人4人

大人陣は絶対笑いを外さないからずるいですよね。冴えないおっさんサラリーマン高田はずっと冴えないままで自分のことのように身につまされるけど、去年観たときよりも重要度が増していたように感じられて、彼がいたからより青春の青春らしさが際立っていたと思います。狂言回しとしての山彦さんと真壁さんもまるで生きているかのようで、墓場としてのセンチメンタル過剰感はこの2人がいたからでしょう。わざわざ放ったギャグの説明をくどくど言って演劇を壊してくる先生の笑い、そういうの苦手なはずなのに全然笑えて自分でも結構不思議でした。


 乃木坂46らしく合唱のシーンがたくさんあったのが良かったです。去年は歌うシーンがかなり少なかったと記憶していて、去年を思い返してみても序盤の歌が結構クライマックス的だったような気もして、しかし今回は随所に合唱にシーンがあって、それが乃木坂が演じることの良さと繋がっていたように思います。アイドルソングを歌う乃木坂ももちろん好きだけど、合唱のようなよりプリミティブな歌を披露する乃木坂は少女感が増していて、その朴訥さがリアルにその年代でしか出せない空気を作り出していました。やっぱり乃木坂が演じてくれて良かった。


 乃木坂が演じることにも通じますが、やっぱり本物の女子高生が女子高生を演じることに勝てるものはないんですよ。去年観た再演は大人の女優が演じていました。演技もとても上手かった。しかし舞台や映画において、演技の上手い大人の女優さんが女子高生を演じるよりも演技力云々以前に実際の女子高生が女子高生を演じるほうが圧倒的に強さがあると、私はいろんな作品を観て確信に至りました。やっぱりその年齢でしか出せないものがあるのだと私は信じています。今回の『墓場、女子高生』では乃木坂46の8人の内、2人が現役女子高生でした。全員ではないけれどリアルさが十二分にあった。本物の女子高生がいるからこその舞台の空気感があって、そこから醸し出されるどうでもいいくだらなさが愛おしかった。もしかしたら、アイドルというのは例え20歳を過ぎていたとしても同じ20代よりもより若く青春に近い場所にいるのかもしれません。


 最後、皆が自分の責任だと背負いこんでいた日野ちゃんの死んでしまった理由を改めてひとりずつ美化して発表する場面があって、私にはそこがクライマックスで、日野ちゃんが泣きながらひとりずつ声をかけていく姿が悲しいようで美しく、息を呑む真摯さがあった。腐った世界は美しく再定義されなければならない。過去は美化されるように青春も美化され、友人が死んだことも美化されます。時が経てば自然に美化されるものをここでは無理矢理に美化していく。普通は時間の積み重ねで少しずつ変化していくものを一気に凝縮した瞬間に生まれる美しさがあった。そして再び死ぬことを覚悟した日野ちゃんの一言一言が本当に胸にくる。


 全編を通して笑いと涙の狭間を揺らめいでいました。ときに笑っていいのか泣いていいのかわからないぎりぎりの空気感、ギャグと不謹慎が紙一重なところが最高だった。誰かは笑って誰かは泣いて、その揺らぎが世界を不安定に浄化させていって、いつかは忘れてしまうけれど何かは残ってほしいという願いがある。ジモは忘れられたら死んだも同然と言うけれど、だとしたら忘れさえしなければ誰もが生きているんです。


 本当に、この8人で舞台を作れたことが素晴らしいなと思える作品でした。パンフの座談会でメンバーが口々に言っていたように、この8人でやれたことを喜んでいて、この8人でこその『墓場、女子高生』が私を感動させました。にしてもパンフの座談会はいちばんしんどさ極まっていたときに開かれたらしく、喋りながら全員泣きまくっているのメンタルやばいでしょうとは思いましたが…。乃木坂46が演じていることを意識しながら観るのは申し訳ないなと思いつつも、だからこその美しさがありました。乃木坂46であるけれど乃木坂46でない8人のくだらなくも真摯な墓場での時間、とても素晴らしかった。ありがとう。無事に千秋楽を迎えられることを祈ってます。


 あと、本当に本当にどうでもいいことだけど、日野ちゃんがやる奇抜なポーズが『わたしの星』を思い出させて胸がいっぱいになったよ。

寺田蘭世さん誕生日おめでとうございます

 遅くなりましたが(本当に!! もう10月も半ば!!)、寺田蘭世さん18歳の誕生日おめでとうございます。半年ぐらい前に顔と名前が一致して、ハルジオン新規でわからないことばかりながらも手探りで応援し始めて、そして9月23日、寺田蘭世さんの18歳の誕生日を迎えました。その日はちょうど乃木坂46アンダーライブ全国ツアー岡山公演。幸運にも寺田蘭世さんの生誕公演となりましたので、私も万難を排して行ってまいりました。岡山は遠かったわ…(正確には会場は倉敷)。


 当日は始発の新幹線で移動。公演は夜なのに何故始発で向かうのかというと尾道観光したかったから。一度は訪れてみたかった尾道。と言いつつ、ロケ地として有名な尾道ですが、尾道を舞台とした作品に特に思い入れのあるものはありません…。生田絵梨花さんの個人PVが尾道を舞台としているので事前に予習していきましたが、どこで撮っているかとかわかりませんでした…。平野育ちの自分は坂のある街に憧れはあっても、それは尾道ではなく聖蹟桜ヶ丘だったことに歩きながら気付いた尾道(『耳をすませば』大好きなので)。尾道は線路を挟んで海側と山側に分かれています。海側にはONOMICHI U2のような新しくてお洒落なスポットもあって観光地らしさがありますが、やはり私が惹かれるのは山側。高台から見下ろす瀬戸内海です。尾道はとにかく階段が多かった。どこもかしこも階段階段階段。住んでいる人はちゃんと生活出来ているのだろうかと不安になるぐらいの階段の街。足腰の強い住民ばかりなのでしょう。


 坂道を歩き回って足が疲れて、駅の案内所で教えてもらった銭湯でリラックスしてから向かったは倉敷市民会館


 生誕ライブってそのアイドルを好きなファンが多数集まって場を支配するような雰囲気があると私はイメージしていたのですが(生誕イベが無いむかーしのハロプロの記憶、鈴木愛理さんの生誕ライブで緑に染まるなど)、このアンダーライブはそのような雰囲気はありませんでした。というか、予想していたよりも寺田蘭世ファンが少なかった。普段はアイドルグッズを身に付けない私も、この日は寺田蘭世さんデザインの真っ赤な生誕Tシャツを着て行ったのですが、会場も真っ赤に染まるほどではなく、これまで通りの普通な乃木坂のライブ会場っぽかったです。やっぱりチケット本人確認のリスクがある乃木坂だからなのか、それともそもそも蘭世ファンの絶対数が少ないのか。いやそれでも握手会の部数は結構ありますし。あとやっぱり推しに似ておとなしそうな人が多いのかも…(私含め)。


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 ここで話は過去に遡ります。今回の岡山公演、寺田蘭世さんの生誕ライブということもありますが、岡山まで私を遠征させたのにはなによりもアンダーライブが好きだからというのが大きかった。私が初めて見た乃木坂46のライブが今年の4月、アンダーライブ東北ツアーの福島公演でした。(本当に本当の初めての乃木坂46は『ぐるぐるカーテン』をリリースする直前のフジテレビの音楽番組でのライブなのですが、まああれは番組収録のライブなので。そのときは『ぐるぐるカーテン』と『会いたかったかもしれない』を歌って、センターで喋る生駒里奈さんがめちゃくちゃ緊張していたのが印象に残っています。)


 その福島で見たアンダーライブが想像を超えて素晴らしかった。私の好きをど真ん中で突いてくるアイドルのライブがそこにありました。それはもうオープニングから鳥肌が立った。Overtureでテンションを上げつつも次に広がったのは静寂。広いステージを右から左へ、左から右へ、メンバーが歩いていく。何回も何回も交錯するメンバー。背後に流れる街の喧騒がさらに沈黙を呼び込みます。その静けさに挑戦的なことをやってやろうとする気合いが感じられ、ゾクゾクとした緊張感が高まっていったのを覚えています。いつまで歩き続けるのか、こちらが不安に思うほど長い時間を止まることなく歩く彼女達、緊張が頂点に達した瞬間に始まったのが『不等号』でした。心の中でガッツポーズしたぐらい、めちゃくちゃかっこいい始まり方だった。


realsound.jp


 音楽サイトのライブレビューでは演劇的と評されていて、私もこのアンダーライブをとても演劇的だと思いました。オープニングの緊張感とそれに伴う私の高まりには、確かに演劇を見ているときに起きる感情の変化と通じているものがあった。そして演劇を見ているような印象は全編を通して感じられました。曲と曲に繋がりがあり、ライブにストーリーがあった。それぞれの曲を大事にしながらも全体の調和がうまく取れていて、しかも盛り上がるだけではない、だからといって退屈ではなく静かに心を揺さぶってくるものがありました。


 私は2階から見ていたのですが、ダンスのフォーメーションもとても綺麗で、それは私が大人数のアイドルグループを苦手であることも忘れさせてくれました。特に『あらかじめ語られるロマンス』と『他の星から』をマッシュアップしたパフォーマンスが最高だった。どちらも星をモチーフにした曲で、それが交互に組み合わさってこれまで見たことがない姿を見せてくれて、かっこよさもさることながら、新しいことに挑戦している姿勢にグッときました。そしていちばん強く印象に残り、美しいなと思ったのはアンコールの最後のシーンでした。乃木坂のライブで最後に歌われる定番の曲『乃木坂の詩』(定番でもない?)、この曲ではメンバーも紫色のサイリウムをステージで振ります。このときもメンバーは紫のサイリウムを掲げてライブは終演しました。最後、サイリウムがまだ灯ったままメンバーの前に幕が下りて、乃木坂の姿を見えなくする薄い幕越しにその紫だけが朧げに光っているのがとても綺麗だった。上品な光がそこにありました。朧げな薄い紫を眺めながら乃木坂の品の良さを感じて、好きという気持ちが溢れるようでした。


 一篇の物語を観ているようで感動しました。諸々の映像作品や『16人のプリンシパル』などに代表されるような、演技することにグループ全体で力を注いでいる乃木坂らしさがライブにも感じられて、そこに好感を持てました。人気のアイドルグループだけど、人気のアイドルグループなだけの普通のライブだね、でそのまま終わってしまう可能性もあったのに、しかし乃木坂46は違った。やっぱりすごいなーというのが率直な感想でした。今思い返すともっと予習していけばよかったなと思います。このときはその公演の尊さに気付けてなかった。


 ただ…、ただ寺田蘭世さんはいなかった。


 その後、夏は全国ツアーも行きましたが、正直なところライブの満足度からしたら2階の遠くの席から見た福島のアンダーライブに及びませんでした。西野七瀬さんにハートをもらったとしても結局レスではないんですよ。ライブが良かったこととレスを頂けて幸せになれたことは別物として考えていきたい所存。


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 そしてやっと本題です。前置きが長かった。寺田蘭世さんの生誕アンダーライブです。アンダーライブ東北ツアーを寺田蘭世さんは捻挫で無念にも欠席していたので、やっとアンダーライブでの寺田蘭世さんを見られます。


 東北に続いて今回もオープニングが凝っていました。モスグリーンのつなぎを着た樋口日奈さんがステージにひとり登場。デパートの清掃員のようです。樋口さんがパントマイムで曇ったガラスを磨くとその向こうに現れたのは乃木坂の皆さん。即ち彼女達はマネキンですね。真夜中のマネキンは、掃除をする樋口さんの目を盗むように、ちょこっと動いたり悪戯したりします。そして世界が寝静まった頃に動き始めた時間は音と共に走り出します。始まったのはもちろん『制服のマネキン』。楽しい時間の始まりを予感させるスタートでした。中田花奈さんのブログにセットリストが載っていますが、序盤の『制服のマネキン』『ここにいる理由』『あの日 僕は咄嗟に嘘をついた』の流れが力強くて、アンダーのグッと迫ってくる勢いを感じました。『あの日 僕は咄嗟に嘘をついた』のイントロの鳥肌が立つ感じ、何回聴いてもハッとして大好きです。記憶の遠くのほうで泣きたくなる自分がいます。


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 最近はハロプロも行かないし、大きい会場でのアイドルのライブは乃木坂でしか見ないのですが、ホールクラスの会場でも乃木坂はトロッコを使うことに結構びっくりしています。そこまでして近さにこだわるのかというところに、握手会などで成り立っている人気はこういう演出にも影響があったりするのかなと思ったり思わなかったり。このときは最初のトロッコチャンスで寺田蘭世さんが1階通路のトロッコに乗ってくれました。うれしい!! バースデートロッコ!! しかもトロッコの進む先は私のいる2階サイド席のすぐ真下を通っていくようです。近くに来てくれる!! うれしい!! まだかまだかとゆっくりと進むトロッコを眺めながら(逆にこちら側から進んでいくトロッコにも誰か乗っていたはずですが、とにかく向こうから寺田蘭世さんが来るということに気を取られて誰かも覚えていません…)。やっと目の前(というか真下)まで来た寺田蘭世さんは周囲に優しく笑顔を見せていて、なんというか、やはり誕生日というのはいいものですね(泣)。私は2階席のサイド、その端から身を乗り出すと真下に1階の通路が見える席で、その通路をトロッコが通っていくので最終的にトロッコは自分の真下に来るのです。そして、もう本当に直下というぐらい寺田蘭世さんが真下に来たとき、寺田蘭世さんの色である赤と白のサイリウムを振りながら呼びかけたら、ぎりぎりで寺田蘭世さんが首を真上に反らしてこちらを見てくれました。優しい瞳。しかもぎこちないハートまで。幸せです。感謝感謝です。倉敷まで来てよかった。お祝い出来てよかった。ありがとうの気持ちでいっぱいですよ。


 やはり乃木坂ぐらい大人気のアイドルグループのライブだと推しからレスをもらえるなんて奇跡なのだと、乃木坂のライブに何回か行ってやっとわかってきました。普段通っているアイドル現場からすると、推しからレスはもらえて当たり前みたいな感覚になっていたのですが、いやいやそんなことないわ完全に驕ってましたわ。乃木坂険しい。というか、ハロオタだった頃はレスなどまったく興味ない、レスもらったなんて脳内乙みたいに思っていたので、アイドルオタクとしての卑しさばかりが増す自分に嫌気も差しますが、彼女達がわざわざトロッコで側まで来てくれるのだからそりゃ期待してしまいますよね。ライブはレスを受け取ることがメインではないと思いつつ、また乃木坂のライブに行くと結局目が合ったとか手を振ってもらえたとかいう話に帰結してしまいがちなのはどうかなと思いますが、しかし頂けるとうれしいものです。寺田蘭世さんありがとうございました。


 でまあレス以外の話です。初めて伊藤万理華さんセンターの『生まれたままで』を見れました。やっぱりステージに立つ伊藤万理華さんはかっこいいですよね。見ているこちらが泣きそうになるぐらいかっこいい。自分の型を持っていて、身体の動きを完全にコントロールして生み出される美しさがあります。指先まで神経の行き届いた身体の流れが見ていて本当に綺麗です。美しく見える動きを知っている人にしか出せない美しさがありました。その伊藤万理華さんの美しさが最も出ているのが『生まれたままで』だと思っていて、それをやっと生で見れたことが感慨深いです。私は『生まれたままで』のMVが大好きで大好きで、乃木坂をここまで好きになる以前からよくYouTubeで見ていたのですが、実際に生で見た『生まれたままで』も最高に良かった。生命力に満ちたステージでした。伊藤万理華さんの姿には「覚悟」という言葉がよく似合います。その視線の強さからか、伊藤万理華さんには道を外さないような意志の強さを感じ、自分の信じた道を進むことの正しさを体現している印象を受けます。それは『生まれたままで』のMVを繰り返し見たからこそのイメージであることはわかってはいるけれど、しかしそれでもまっすぐに進む伊藤万理華さんはかっこいいです。そういう強さがあるからこそ、その一方で見せてくれる、強さと真逆のふにゃ〜っとしたお茶目な伊藤万理華さんが尚更可愛くて、より愛おしさを感じさせます。素っぽい表情が出てる伊藤万理華さんのブログ写真大好きなんですよ。伊藤万理華さんというとカルチャー方面での活躍が話題によく挙がりますが、最近の雑誌のインタビューではアイドルを楽しんでいる私をもっと見てほしいと言っていて、そういうインタビューを読んだからでもあるけれど、ステージで歌い踊っている伊藤万理華さんは本当に輝いているなと思います。彼女のいるべき場所に彼女が立っていて(乃木坂的にはセンターに立ちたいはずだけど)、そこから見える景色と私の見ている景色が交錯しているということが何よりも素晴らしいことではないでしょうか。夏の全国ツアーで初めて生で見た伊藤万理華さんが素晴らしくて、それまでよりもますます好きになって、そしてアンダーライブで再びそのかっこいいパフォーマンスを見れたことがとてもうれしいです。


 話が脱線しすぎた…。伊藤万理華さんも大好きだから話が逸れましたね…。本当に書きたいのは寺田蘭世さんについてです。


 我が推しの寺田蘭世さんですが、推しの贔屓目かどうかわからないけれども、寺田蘭世さんはフロントに立つことが多かったような気がします(乃木坂用語でフロントとは1列目のこと)。今回の中国地方のアンダーライブツアーはセンターが樋口日奈さんで、その左右を伊藤万理華さん井上小百合さんが固めるという布陣でして、寺田蘭世さんはそのまた隣に立つということが多い印象を受けました。寺田蘭世さんは全国ツアーでもアンダーながらも乃木恋リアルをやったり、もしかして推されているのではという実感があります。ただ正直なところ、かっこよさという点では伊藤万理華さんなどには及ばない…。ダンスも覚束ない感じがある。でも楽しそうに踊っているところを見ているとその可愛さにこちらもにやけてきてしまって、この瞬間を共に出来てよかったなと思わざるをえないのです(寺田蘭世さんなら何やっても可愛いみたいな盲目さある…)。


 それまでも全国ツアーなどライブで何回か寺田蘭世さんを見ましたが、このライブはもっと特別に寺田蘭世さんを見ていたような気がします。生で見る寺田蘭世さんは、映像や誌面を通じて見るものよりも遥かに瞳が美しい。瞳が本当に綺麗で、そして強い。最近女の子の良さを評するのに「強い」という言葉でまとめてしまう傾向があるのは自分でも軟弱だなと思うのですが、それでも寺田蘭世さんの瞳には強さがあるとしか言えないひたむきさがあります。瞳の強さはその後ろに強い決意があってこそです。寺田蘭世さんは乃木坂のセンターに立ちたいといつだって強気に言っています。弱腰になりそうなときも挑んでいる。かっこいい。乃木坂の選抜システムはまったく好きになれないけれど、そのルールの上で戦うことを決めた以上は頂点に立ってもらいたい気持ちがファンとしてはあります(もちろんそれはセンターに立つという目標を掲げている寺田蘭世推しだからこその願いですが)。寺田蘭世さんはその期待に真っ向から応えようとしていて、当然それは簡単なことではないけれど、強固すぎる決意は逆に脆いのではないだろうかという不安もあって支えてあげたくなる気を起こさせます。アイドルとファンによくある共依存みたいな感じかもしれません。センターは1期生でも立てていない人が多い中で、厳しい目標だというのはわかりきっていること。新参だけど、2期生に陽が当たりづらいのはなんとなく察しているけど、でも寺田蘭世さんには夢物語じゃなく本当にセンターに立ってほしいです。というのをライブを見て思ったわけです。はい。


 かっこいい系のパフォーマンスはまだまだだな〜と、おまえどこから目線だよと自戒しつつ見ていた私でしたが、終盤の『自由の彼方』での寺田蘭世さんがそれまでのどの曲よりもかっこよく見えました。ダンス決まってました。全国ツアーでの『嫉妬の権利』を思い出したよ。寺田蘭世さんは「よきかな〜」と両手を頬にあててふわわ〜としている瞬間がいちばん可愛いと私は断言しているのですが、そういう可愛い寺田蘭世さんにいろんな場面で出会えているからこそ、たまに見せる凛々しい姿にハッと惚れぼれしてしまうのです。いつか乃木坂46のど真ん中できりりと前を望む寺田蘭世さんを見てみたい。なんか伊藤万理華さんと逆ですね。


 忘れてはならないのがこの日は寺田蘭世さんの誕生日だということで、最初のMCで寺田蘭世さんの誕生日をお祝いしました。しかしあっさりしたお祝いで、これで終わりならちょっと悲しいけどアンコールあたりであるでしょと予想。案の定アンコールでケーキが出てきて、みんなでハッピーバースデーを歌ってお祝い。寺田蘭世さんも泣いてました。幸せな光景だ。寺田蘭世さん曰く、去年はケーキもなくてひとりで寂しい誕生日だったらしく、翻って今年の誕生日は盛大でしたね。充たされるものがありました。誕生日をお祝いできてよかった。


 中国地方ツアーのアンダーライブも東北ツアーに劣らず演劇的なライブでした。ストーリーがあった。私は『海流の島よ』からの『魚たちのLOVE SONG』が好きでした。青と白からなる初めて見たマリンルックの衣装がとても素敵だった。その衣装を寺田蘭世さんも着てパフォーマンスしていて、とても似合っていました。しかもそれは以前握手会で着ていた服を彷彿とさせて、私はそのときの服装が大好きだったので、意味のない共通点かもしれないけどそのことがうれしかったです。というか乃木坂の衣装大好きすぎて、何故に今まで乃木坂にハマっていなかったのか不思議なくらい。乃木坂の衣装イメージは淡い色を重ねていって、見え方によって色を変えていく様が女の子の心模様を覗いているような気持ちにさせてくれて、しかもそれが乃木坂の楽曲とも合っているのが素晴らしいなと思います。あとは最後の『命は美しい』『自由の彼方』『きっかけ』でしょうか。とにかくかっこよかった。今のアンダーのかっこよさが十分に詰まっていた3曲だったように思います。抱き合う伊藤万理華さんと井上小百合さんのなんと美しいことよ。そして『きっかけ』のイントロ、三角形のフォーメーション、前のメンバーの肩に置かれる手、すべてに意味があって紡ぎ出される美しさ。その動き、その歌からは、私の乃木坂46への思い入れととても近いところにアンダーライブがある、そんな気がしました。見れてよかったなと、来てよかったなと思えた岡山のアンダーライブでした。


 しかしこれはアンダーライブなんだという残酷さもあります。美しいはずなのに、その美しさを手放しで喜べない気持ちもあるのが乃木坂のつらいところ。いや、オタクなら手放しですごいものはすごいと叫んでいいはずなんですけどね。MCでも話していたように、アンダーメンバーそれぞれにそれぞれの想いがあってこのステージに立っています。しかしそうであっても私にはひとつの大きな鳥のような優雅さを湛えた姿を全員で見せてくれていました。それはとても美しいものでした。


 最後は『乃木坂の詩』だと思っていたのですが、『おいでシャンプー』でした。『おいでシャンプー』大好きだし、やっぱり盛り上がって終わるのが好きです。皆さん笑顔が素敵で、晴れやかなライブの終わりでしたよ。寺田蘭世さんおめでとうございます。


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 そして2日後、場所はパシフィコ横浜。私は初めての乃木坂46個別握手会に参加していました。人が多かったですね。個別握手会は全国握手会と比べてそれほど混雑していないよと教わって参加したのですが、いやいやそんなことなかった。人多すぎだった。しかしめげない。私は寺田蘭世さんに直接お誕生日おめでとうと言うんだと決意して並びました。そして寺田蘭世さんに誕生日おめでとうと伝えました。3回握手して3回伝えました。近くで見る寺田蘭世さんは素敵だった。『ハルジオンが咲く頃』の全国握手会でも寺田蘭世さんと握手したはずですが、そのときとは明らかに違う何かが私と寺田蘭世さんの間にあったように思います。単純に私が寺田蘭世さんのことをより知って、より好きになったからだと思いますが。しかしまあ可愛かった。握手会で間近で見ても、それは当たり前のことですが、寺田蘭世さんの瞳は綺麗でした。透きとおる黒さがあって、嘘をつけない輝きを秘めていました。近くで見れて、声を聞けて、本当に幸せでした。寺田蘭世さんにとってはファンのひとりでしかないだろうけど、私にとってはただひとりの寺田蘭世さんであって、その握手の刹那の記憶がこれからもずっと心に残り続けるんだろうなと思います。


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 寺田蘭世さんがまだ乃木坂46のセンターに立ててないのに、正直なところもう私は寺田蘭世推しをやりきった感じです。というぐらい濃い春から夏にかけてでした。我ながら燃え尽きるの早いわ。でもそれはあくまで私の物語であって、寺田蘭世さん的にはまだまだ続くわけです。私の第1章は終わったけど、しかし第2章が始まるわけです。始まるはず。始めようぜ。そして第何章になるかわからないけど寺田蘭世さんがセンターに立ったとき、一緒に喜びを分かち合いたい。できればグインサーガみたいになる前に寺田蘭世さんにはセンターに立ってほしい。祈ってる。


 強いようで弱いようで、こうやって書いていても寺田蘭世さんのことがわからなくなることがあります。というかわからない。わからないところが好き、みたいなところもあります。これが恋か。最高かよ。何をしても好きだなと思えるのが盲目すぎて、自分でも自分に若干引いているのですが、こういう熱量はいつまでも続くわけでもなく、これからどうなるのかなーとちょっと不安ではあるけれどまあ大丈夫でしょう。しかし、16枚目シングルで選抜入りでもしたら鎮静化した想いが再爆発するかもしれない。いや、早く選抜入りしてください。センターに立ってください。寺田蘭世さんが先頭で見つめる先を一緒に見てみたいよ。


 改めて、寺田蘭世さん18歳の誕生日おめでとうございます。もっと笑ってる寺田蘭世さんを見たい。次の乃木坂工事中では16枚目シングルの選抜発表です(しかし寺田蘭世さんの自転車は大甘の裁定でしたね)。寺田蘭世さんの選抜入りの予感があります。勝手に私の中には今度こその空気がある。今から緊張しています。これからのことはわからないことだらけだけど、寺田蘭世さんのおかげで幸せな夏を過ごせました。ありがとう。



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18歳の瞬間は
一人でホテルの部屋でした
でも、色んなメンバーからお祝いメールを貰い
伊織ちゃんとは
直接会いました!
寝ぼけながらも
らんぜのお誕生日だからーって付き合ってくれました
ホント可愛い


その日はなんか特別なことしたいなーと思い
ホテルのお風呂で
音楽を流して踊ってました、、、
我ながら良くわからないけど自分らしくない事
今年はしたい

勝手にらんぜはこういう子だと思うから
こういう事したほうが良いとか勝手に決められたくない、
なんでも似合う人でいたいから何やってても
らんぜらしいねって
もっともっと言われたい

ちと、話しそれましたがm(._.)m

blog.nogizaka46.com

西野七瀬さんのハートに私のハートが撃ち抜かれた夏の終わり、神宮、夜

 乃木坂46バースデーライブ初日、台風が近付いている中で雨は振ったり止んだりで、しかしそこまで強く降ってきてはいなかったのでつつがなくライブ本編終了。初日は1st『ぐるぐるカーテン』から5th『君の名は希望』までの全曲を披露してくれました。一緒に見た知り合いと、明日は『ガールズルール』で始まるのかいいなーとか話したりしていたらアンコールスタート。聴き覚えのあるこのイントロは…、『ガールズルール』じゃないですか!!!!!!! まさかここで『ガールズルール』が来るとは予想していなかったので、自分もそして周りの客も大興奮。そりゃガッツポーズしちゃいますよ。と同時に雨も強くなってきました。しかし雨なんて関係ない。リリースされた当時は何故こんな安直な沸き曲を乃木坂に与えるんだとがっかりした記憶もありますが、時が経てばガールズルール is サマーアンセム。野外で、雨で、ガールズルール、盛り上がるしかないでしょう。最高…!!


 結局アンコールは、

と、やけくそかってぐらい夏の盛り上がる曲で畳み掛けてくる締め方で、最高です大満足です。最後、何か足りないでしょと『裸足でSummer』を曲紹介して、センターステージのそのまたいちばん高いところでひとりで踊る齋藤飛鳥さんが神々しかった…。


 で本題なのですが、私は1塁側スタンド席の前の方でも後ろの方でもなく、ちょうど真ん中の通路のちょっと後ろで見ていたのですが、なんとアンコールでスタンド席にメンバーを乗せたトロッコがやってきてくれたのです!! まさかスタンド席にメンバーが来てくれるとは!! しかも私のいる席のすぐ目の前の通路を通っていくらしい!! 『ガールズルール』で高まっているところにメンバーも来てくれるということで、私は興奮と緊張でなんかよくわかんない状況に…。


 1塁側にまず来てくれたのが白石麻衣さんと生田絵梨花さんで、手の届きそうなほどの近さで目の前を2人が通っていきます。近いでしょ、近すぎでしょ…。白石麻衣さんのオーラには圧倒されますね…。すごいわ…、やっぱりアイドルだわ…。ため息が出て思考停止に陥るぐらい圧倒されるものが2人にはありました。これはやばいぞ。


 2人が通りすぎた後に我に返って、いやせっかくこんなに近くに来てくれているのだからひと目だけでもレスを頂きたいなと邪な望みが湧き上がってきました。所詮レス厨なので…。でも無理でしょ、周りみんなパニック寸前ですよ、我も我もとレスくれ乞食に囲まれてそんなに容易く頂けるはずがないと、レスが欲しいなという気持ちはあったものの周囲の興奮っぷりに冷静にならざるを得ないものがあったのも確かです。私がもし白石麻衣さんの立場だったら怖くて完全に引いているような狂気に包まれた空気感がありました。


 白石麻衣さんと生田絵梨花さんが通りすぎていって、『ガールズルール』も終わったと思ったら『夏のFree&Easy』が始まって、盛り上がることしか考えてないような流れに当然盛り上がって、やっとなんとか心が落ち着いてきた頃に3塁側からやっと1塁側に回ってきた西野七瀬さんと齋藤飛鳥さんが私達のところに辿り着こうとしていました。白石生田で既に心がオーバーフロー気味なので、やってくる2人の輝きを受け止めきれるのか不安になりつつもトロッコはゆっくりと近付いてきます。


 そしてやってきた西野七瀬さん。西野さんが目の前に来たとき、西野さんはちょうど私とは反対側、グラウンドの方向を向いていました。その西野さんがこちらに振り向く。嘘みたいな本当の話なんですが、その振り向く様がスローモーションなんですよ。映画かよ。こちらに顔を見せてくれた西野さん。可愛い…。これは守ってあげたくなるわ…。よく言われているように笑顔の中にも儚さを漂わせていて、狂騒の坩堝で咲く一輪の花のようです。私の席はトロッコから近いのですが少しだけ低い場所だったので、西野さんの視線は私の頭の上を通りすぎていきます。正面から少しずつ遠ざかっていく西野さん。浮かれていた私は今しかないと勇気を振り絞って、遠ざかっていく西野さんに向けてハートを作ったんですよ。両手でハートです。普段のアイドル現場ではハートなんて絶対作らないのに。オタクのハートケチャを笑う側だったのに。


 しかし去っていく西野七瀬さん。ちょっとハートを作るのが遅かったかなと思い始めて、周りの猛烈なレス頂戴アピールの中でひっそりとしたハートではやっぱり無理だよなと諦めかけたそのとき、西野さんがこちらを向いて西野さんと目が合ったのです。マジか…。目、合っちゃったよ…。呆然としていたら、西野さんがマイクを持ちながら器用に人差し指と中指でハートを作ってくれたのです。マジか…。こんなことってあるのか…。本当にレスって頂けるんだという感動、他の人がもらっているのを見てもまさか自分も頂けるとは夢にも思っていなかったのでびっくりしてしまいました。しかもハートを健気に作る西野さん可愛すぎるでしょ…。呆然として空っぽになった心に西野さんの視線とハートが奔流のように流れ込んできて、私はあっという間に西野さんを好きになっていました。


 西野七瀬さんの後ろに続いていた齋藤飛鳥さんについてはほとんど覚えていません。


 このような優しさに触れて西野七瀬さんを好きにならないわけがない。これは恋に落ちるわという気持ちがよーくわかりました。西野さんのファンには若い男が多く、なおかつガチ恋が多いのも納得できました。ライブのレスでさえこれなんだから握手会なんてどうしたって恋に落ちるはずです。怖い…。乃木坂46の人気が大きくなって、大きな会場でライブをするようになっても、お客さんの近くにメンバーを寄越す意図もよーくわかりました。テレビや雑誌で見る人を間近で見れるすごさ。ライブでのそれは握手会などのイベントとも違った祝祭に似た非日常感があって、そこでの距離感の落差が生み出す奇跡は本当にすごいなと思いました。しかしこうやって遠くの席まで来てくれるのは人気メンバーであることが多いので、人気メンバーがさらに人気になっていくのはずるいなあという気持ちもあります。


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 たかだかアイドルの一瞬のレスとわかっていても、一瞬の出来事だからかもしれませんが、あの瞬間、人でいっぱいの神宮球場の中で私と西野七瀬さんだけの時間があったことに運命を感じざるを得ないものがありました。オタク運命好きすぎですからね。レス一発で落とすなんてオタクチョロいとして片付けるにはあまりにも深い尊さがあった。西野七瀬さんすごい、というか好き。西野七瀬さん好きです。好きの気持ちが巡り巡ってアンコールから遡り、ソロで歌った『ひとりよがり』を思い出しました。降りしきる雨がスポットライトで反射してダイヤモンドダストのような光群に包まれて歌っていた西野さんがとても美しかった。仙台の公演では、MCの時間に隣のメンバーの肩に頭を預ける西野さんに愛おしさしかなかった。もっともっと遡って、『無口なライオン』での西野さんに夏と少女でしか生み出せない美しい悲しさを見た。そしてチアガール、マカオ。たくさんの西野さんを思い出して(それほどでもないか…)、今に戻ってあの瞬間の西野さんと出会えたことに再び幸せを感じた。感謝です。


 西野七瀬さんのハートの記憶を反芻しながら帰った自分の部屋で、私は西野さんのポスターを貼りました。夏は終わりました。




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