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『転校生』

 女子高生21人の教室を舞台に同時多発的にたくさんの会話が入り乱れる劇。会話を追うというよりも、女子高の喧騒に身を委ねるという感じでした。転校生がやってきたこと以外、特に大きな話もなく、起承転結も無いように見えて、実はあったように感じる不思議さ。あまりにたくさんの会話が同時に進行していて、その喧騒が靄となり、なんだか大事なことを見逃しているのではという不安が起こり、その不安こそが現実に生きている上での視野の狭さと重なってくるよう。本物の女子高の教室は想像するしかないが、この舞台を観ていてずっと疑問に思うことがあって、でも最後に演者自身がその疑問に自覚的であることが判明したことに、すごく腑に落ちました。


 先日、『墓場、女子高生』を観て清水葉月さんすごいなと思って、この『転校生』もまた清水葉月さんがとても良かったです。ありふれた女子高の教室のはずなのに、清水さんだけ存在が半歩はみ出しているような雰囲気でした。


 舞台上には21人。これだけ人がいるとそれぞれの関係はどうなっているのだろうと、観てるほうもこんがらがりそうですが、実際は誰もがフラットで、それがすごすぎるなと思いました。これなら人物相関図は必要無いですね。桜井美南さんの役は例外だけど、ほぼ全員が教室の中で異常なほど平等に生きていて、それがつまり疑問でもあったわけで、でもその非現実感に皮肉が無くて、あくまでそうなんだと思わせる空気の作り方が良かったです。そんな感じだから、こちらの感想も全員良かった、みたいな感じになってしまいます。まあ、その通りなのですが。


 夏の終わりに蝉の鳴く声がBGMの舞台を観ると、『わたしの星』を思い出してしまいます。夏休みを稽古しながら一緒に過ごしたり、共通する点が多いし、なにより『わたしの星』にも出てた吉田圭織さんがこちらにも出ていて、夏は再びやって来るということを強く感じさせます。この舞台は観客よりも演者のほうが、稽古から含めて長い時間を一緒に過ごしてとても楽しんでいるのでしょう。


 少しだけ『幕が上がる』(映画のほう)とシンクロする部分もあり、そのせいか最後不思議な感動に襲われ、胸いっぱいになりました。最後だけ、何か別の物語っぽかったのは気のせいかな。ともあれ、夏の終わりに観るにはぴったりの舞台でした。