ハコイリ♡ムスメ@南波一海のアイドル三十六房(20150107)

 ハコムス待ってて!! と会社飛び出した水曜の夜。2015年のハコイリムスメは僕を走らせます。仕事うわの空でハコムスのことを考えていたら会社を出るのが遅れてしまい、タワレコ渋谷の地下に着いたときは1番手のamiinaが始まっていました。amiinaは音楽好きが好きそうな曲だ。とりあえずハコムスの出番には余裕でした。後方で視界は良くありませんでしたが。


 この日は鉄戸美桜さんがお休みでした。しかし欠けたことを感じさせないパフォーマンスでした。タワレコ渋谷の地下は音の鳴りが良くて、何度も聴いた曲でも音がとても新鮮に聴こえました。ひとつひとつの音の解像度が高くて、音にハッとする瞬間が幾度もあったのが印象に残っています。新しい発見があって、たまにはカルチャーズ劇場以外で見るのもいいものです。彼女達の歌声も森を越えてきたかのような、静けさの中にスッと際立つ美しさがあり、耳に綺麗に伝わってきました。


 1曲目は『はんぶん不思議』で外向きのライブでは定番の曲。2曲目が『パジャマでドライブ』で、こういう場でのユニット曲は珍しいなと、いつもカルチャーズ劇場の公演しか行かないので実際のところ本当に珍しいのかよくわからずに珍しいと思っていますが、始まる瞬間、夜明け前の静けさに会場が包まれたときの甦ってくる感情、一気に劇団ハコムスのドラマがフラッシュバックされ、高速で再生されました。時間が戻され進んで、歌声が響く現実を通して記憶の中の物語が透かし見えたときのゾクッとする感覚。劇団ハコムスを見た人にしかわからないと思いますが、歌の背後に物語が湧き立ってきます。そしてこれは、やはり彼女達の表現力あってこそなのだと思います。歌で情景を変える瞬間を目の当たりにして、立ち尽くし、心が物語の中を彷徨いました。後で聞いたら、みんな小松もかさんすごい良かったと絶賛してたのだけど、自分のところからはほとんど見れず残念。にしても、これまで劇があるからこそ、より崇高さが増すと思っていたユニット曲で、劇が無くても心に響いてくるものが強いことにびっくりしたというかすごいなと思いました(自分が劇団ハコムスを知っているからというのもありますが)。


 そして3曲目、最後の曲は『Be My Diamond』でした。盤石です。この曲の胸迫るシーンのひとつに、メンバーが左から右に空を見上げる振付があるのですが、その眼差しが大好きで大好きで、このときもその見上げる姿を見て、自分の汚れたものが一瞬でも消し去られたような時間でした。高く打ち上げられた野球ボールを見ているのか、散りばめられた星々を見ているのか、遠くを見つめる視線を目で追いかけていると、自分が見つめられているわけでもないのに、ちゃんと存在が確認されているような、胸にしっかりと届くものがあるのです。彼女達もこれからはテレビだったりスクリーンだったり、感動を与える先の人が目の前にいるとは限らない仕事をもっとたくさんこなしていくでしょう。そんな場面で、如何に遠くの見えない人達まで気持ちが届けられるか、世界に入り込ませるか、そこですよね。そういう厳しさの中で生きてゆこうとする気概がしっかり伝わってくる、さすが女優ハコムスだなという表情でした。


 という感じで、立ち見の後ろのほうで人の隙間から覗くようにライブを見ていたのですが、『パジャマでドライブ』と『Be My Diamond』では、何故か門前亜里さんしか視界に入らなくなってしまうという謎の門前ゾーンにハマってしまって、ずっと門前さんを見ていました。びっくり。本当にうまい具合いに人垣のスリットで僕と門前さんが世界から切り離されたわけです(僕からすると)。門前さんの瞳は、そこだけ夏が訪れた深い森の奥の湖水のように夏の陽光できらめいていて、その揺らめく水面に幻惑されそうでした。門前さんの瞳にだけ夏が宿っていたんですよ。冬生まれなのに。2人だけの宇宙になった錯覚は、静かな校庭で星空に包まれているようで、なんだかとても気持ちが落ち着きました。今思い返すと、向こうからはこちらが見えていない一方通行の視線だったから、ここまで穏やかに見れたのでしょう。自意識過剰の自分にはあれぐらいの距離がいちばんです。


 ライブ後は南波一海氏と嶺脇社長を交えてのトーク。楽屋はうるさいけど、グループコンセプトのためにお淑やかにがんばってるのよーという話が面白かったです。ですよねー。菅沼もにかさんとか楽屋でめっちゃうるさそう。そこに神岡実希さんがハコムスのカバー選曲について話し始め、唐突になんだなんだと訝しんでいるところで、カバーをするようになって昔の曲に興味が出てきたことや門前さんが中森明菜大好きエピソードを重ねて、タワレコ中森明菜のアルバムを買ったとタワレコを持ち上げる流れに至り、それがまるで台本があるかのような美しい清流でして、つまり神岡さんがんばった!! 本当、突然の神岡さんにびっくりしましたもん。同じように秋田出身の嶺脇社長に対して突然の秋田アピールをした内山珠希さんは、話もどこに着地してよいのかわからない酔っ払っているようなフラフラ具合いで、困った社長に麻布にある秋田料理のお店をオススメされてましたが、珠希さんそのままお酌してもまったく違和感ないですよ。ハラハラしつつも面白かったと思ってしまうのは甘いファン目線ですね。


 今回は立ち見の後ろのほうで、全体を見渡せるわけもなく、仕事を放り投げてもっと早く来ればよかったなと少し後悔してたのですが、実際ライブが始まると思いのほかステージに集中出来て、つまり視線を外させない魅力がステージにあったわけです。偶然のこととはいえ、比喩ではなく本当に視野が狭くなったおかげで歌を聴くことに集中出来たこと、門前さんの存在感がこの世界から半歩透きとおっているように見えたこと、これまでの記憶に今日の記憶が積み重ねられていく重みが生きている実感に繋がり、僕は明日も朝の道を歩くのです。


 またも全体的な感想はうまくまとまらず、かなり盲目的、しかも門前さんに偏っているというどうしようもないブログになってしまいました。日に日に褒めるしか能がない猿みたいなブログになっていますが、ダメ出しなんてスタッフがやればいいことです。僕に出来ることは褒めるだけなんです。ということで、やっぱりハコムス見るならカルチャーズ劇場でしょうと思っていましたが、たまには違う場所で見るのもいいなと考えが変わったイベントでした。新年明けてハコムスの皆さんの顔を見れたのもうれしかった。良い水曜日でした。