江本祐介『ライトブルー』

 江本祐介『ライトブルー』のMVがYouTubeで公開されました。この曲は去年の春、乃木坂46桜井玲香さんの個人PV『アイラブユー』のために書き下ろされた曲です。その後、いわき総合高等学校演劇系列第13期生卒業公演『魔法』でも使われました。その楽曲が同じくいわき総合高校の全面協力による素晴らしいMVとなってこの冬届けられてきました。


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 実は去年いちばん後悔したことは『魔法』を見に行かなかったことです。『魔法』は脚本演出をロロの三浦直之が手がけています。私はロロの描く青春が大好きなんですよ。ロロの作品には胸かきむしりたくなるような若く切ない青さがあります。いつ高シリーズみたいな作品が本物の高校生で演じられるのは最高に違いないと、卒業公演の日程が発表されて自分のスケジュールを調べたら、その日私は東北は東北でも仙台にいることになっていました。ちょうど乃木坂46の全国ツアー仙台公演と被っていたのです。迷った。迷いに迷ったけどライブのチケットも宿も既に取ってしまっていて、全員揃う乃木坂のライブはその仙台が初体験なので、泣く泣く『魔法』を諦めました(肝心の桜井玲香さんは欠席だったのですが)。乃木坂は乃木坂でとても良かったけれど、後になってインターネットに流れてくる『魔法』への絶賛の言葉に、見なかったのを悔やむ気持ちが消えることはありませんでした。


 年が変わって、それらもすっかり遠い記憶となっていた頃、『ライトブルー』のMVが公開されました。長回し一発撮り。青春としか言いようがない一瞬の連なり。素晴らしかった。私が出会えなかったあの夏の日もMVで描かれているような青春が詰まった時間だったんだろうということが想像できて、それはすれ違ってしまった現実を追体験しているようでもあり、『魔法』を見に行かなかった後悔を少しは忘れることができました。


 この曲を初めて聴いたのは乃木坂46『ハルジオンが咲く頃』初回盤DVDに収録されている桜井玲香さんの個人PV『アイラブユー』のエンディングにおいてでした。甘酸っぱい告白と初恋が爆発する瞬間のくだりから一気になだれ込む爽やかなメロディー。めくるめく世界が開けていく開放感と、そこに駆け出したくなる前のめり気味の青春に溢れています。曲名は軽やかにライトブルーと題されていますが、タイトル以上に青すぎる青さに気恥ずかしささえあります。


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 いわき総合高校の高校生達にとって『ライトブルー』は自分達の青春と強く結び付けられた音楽だと思いますが、私にとっての『ライトブルー』は乃木坂46と、そして福島との絆でもあります。『ライトブルー』とは関係のないところで、私は去年の春に2回福島を訪れました。3月に福島の中高生達による舞台『タイムライン』を見るために、4月は乃木坂46アンダーライブを見るために、2ヶ月連続で福島に行きました。それらを通して、私は福島の学生による舞台をまた見たいなと思ったし、そして乃木坂に深くのめり込むようになりました。福島で再び舞台を見ることは未だ叶っていませんが。


 私にとって『ライトブルー』は『ハルジオンが咲く頃』と対になる楽曲であって、『ライトブルー』を聴くと、これだけは絶対に止められないとでも叫んでいるような青春の輝きを音から浴びる一方で、少しノスタルジックに『ハルジオンが咲く頃』がリリースされた時期を思い出します。『アイラブユー』ではさわりしか歌われてなかった『ライトブルー』を聴いて、あの頃を想起するのはとても不思議なことですが、何故か思い出すのです。特に予定もなく仕事を休んで歩いた平日の神田川の散りかけの桜。名画座で観た『四月物語』のスクリーンいっぱいに広がる桜。そして乃木坂駅で見た『ハルジオンが咲く頃』のパネル展。平日の夕方の人もまばらな駅の通路をひとつずつじっくりとパネルを見て回ったのを覚えています。それから福島では温泉に入りながら、知り合いの乃木坂ファンにいろいろ乃木坂のことを教えてもらった。初めての乃木坂アンダーライブを見て感動して、福島からの帰りの新幹線の中で苦労してモバメの登録もしました。


 ライトブルー、ハルジオン、乃木坂46、福島。それらがひっそりと、しかし確かに自分の中で共鳴している。桜井玲香さんの個人PVで使われたのとはまた別のベクトルにおいて、私と『ライトブルー』は繋がっているように感じています。そしてそういう思い入れをひっくるめても尚負けない強烈な青春が『ライトブルー』のMVには満ちています。青春を全力で肯定する力に溢れていて、それはリアルにその年代でしか表現し得ない圧倒的な強度でもって迫ってきて、過去に向きがちな私の内では青い空気と私が衝突を起こし、渦めく感情の嵐を一瞬で清冽な空気が洗い流します。それはまるで春の嵐のようでもあって、後に残るのは生きることへの希望へと続く青い空です。


 本当に素晴らしいMVです。みんな顔がいい。関わった人達の愛が詰まりまくっているのがよくわかります。そんなMVで彼女達の青春にちょっとだけでも触れられたのがうれしい。


 3月にはこのMVの監督の松本壮史と江本祐介もメンバーであるEMCがロロとコラボするライブがあります。もちろんチケット取りました。そこで『ライトブルー』が歌われることを期待しつつ、今年もライトブルーみたいな青春がどこかで爆発していないだろうか耳を澄ましてみようと思います。


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