ハコイリ♡ムスメ『ハコイリ♡ムスメ定期便5月号 ~5月の伸びゆく若葉たち~』@AKIBAカルチャーズ劇場(20150516)

 覚悟していたことですし、いつかは来るのだろうなと思ってはいたけれど、いざそのときが来ると悲しいものですね。今回の定期公演において、門前亜里さんが7月定期公演をもってハコイリムスメから卒業することが発表されました。


 ハコイリムスメは去年の夏、夏限定のアイドルグループとして結成されました。実際どこまで構想が練られていたかはわからないですが、表向きはそう。それが好評を得たため夏以降も活動続行。月1回の定期公演を基本としつつ、女優志望のメンバーで構成されたグループということでお芝居と歌を組み合わせた劇団ハコムスを公演の目玉として、ときにはマザー牧場にバスツアー行ったりバレンタインデーにはチョコレートを一緒に作ったり、季節の移り変わりと共に駆け抜けてきました。4月からはメンバーが1人増え、TIF出演も決まり、これから未来が開けてくるぞという空気が確かに感じられました。その可能性しかない真っ白なキャンバスに落とされた一点の染み。Twitterで告知された、5月定期公演でメンバーのひとりから大切なお知らせがあるという文字から、僕は不安しか感じませんでした。果たして、大切なお知らせとは門前亜里さんの卒業でした。とうとう訪れたかという思いです。言葉にしたら現実になりそうで曖昧なまま濁していた不安が実体を持って現れました。


 とまあ、悲しいお知らせもありましたが5月の定期公演『5月の伸びゆく若葉たち』を観てまいりました。野島伸司あたりが書きそうな、青春らしいタイトルです。まだ新メンバーが発表されていなかった4月とは異なり、OP映像も8人バージョンでしたね。セットリストは4月定期公演と同じ、春らしい曲の数々です。


 1曲目の『抱きしめて』から門前亜里さんの瞳が驚くほど透きとおっていて、今日は特別な日なのではと、なんだか予感を感じさせました。この時点で僕はもう胸がいっぱい…。


 5月定期公演の目玉は劇団ハコムス。ハコムスといえば劇団ハコムスです。マイク越しだけが残念だけど劇団ハコムスです。今回は3組のユニット曲それぞれにお芝居が加わりました。菅沼もにか我妻桃実(ぽにょ)組は元気いっぱいのモテ自慢トークを、小松もか内山珠希神岡実希阿部かれん組は女子会トークを繰り広げ小松さんの振り切れっぷりが最高でした。珠希さんは酒やけお大事に…。演技できるのか心配してた阿部ちゃんのOLも良かった。そして、みんな期待していて、劇団ハコムスといえばこの2人と自分の中でイメージされるようになった鉄戸美桜門前亜里組が最後、『いちご水のグラス』で5月の劇団ハコムスを締めくくりました。



斉藤由貴 いちご水のグラス - YouTube


 素晴らしかったです!!!!!!!! 『いちご水のグラス』の歌詞の世界そのままに、静かに別れの季節を描いていました。クスッと笑えて、だけど切ない。とても切ない。門前亜里さん演じるピアニストの美少年は寂しさを押し殺すように別れを告げ、鉄戸美桜さんの静かな悲しみが場を包み込みます。門前さんの留学先はドイツで、これがとても文学的というか、門前さんらしさが脚本に反映されてますね。スラックスを履いて、髪を後ろでひとつにまとめた門前さんは男というにはあどけなくて、でもその眼差しは凛々しかったな。お芝居からの歌も、静謐な空気をそのままに凪いだ海のような優しい切なさで浸してきました。イントロでのスポットライトの青さ、すれ違う2人、鉄戸さんの頭に手を添える門前さん、絡み合う手、たくさんのシーンが記憶に残っています。2人の歌声、特に鉄戸さんの歌が強く胸に響いてきました。遠く離れ離れになる悲しさが狂おしいほど歌声に乗せて伝わってきました。鉄戸さんすごいよ…。


 前の2組が完全に前座となっていました。それぐらい鉄戸門前の演技と歌が群を抜いてすごかった。この『いちご水のグラス』が、今年の上半期『はじまり』を超えて過去最高傑作でした。いえ、今までのハコムスでいちばん素晴らしかったかもしれません。


 劇団ハコムス後は『微笑みと春のワンピース』を歌い、告知のために1列に並んで門前亜里さんがセンターに位置したときは、来たるべきときが来た感で、まだ何も喋ってなくても心が重くなりました。そこに立っただけで言わんとすることはわかるよ。そして、いろいろな告知の後に最後、門前亜里さんから7月で卒業する旨が告げられました。静まり返ります。無音の空間で、丁寧に心の中の言葉を振り絞るように口に出す門前さんは美しかった。話しながら流れる、おそらく幾夜も悩んだに違いない末の門前さんの涙は、星よりも透きとおって綺麗で、だけど星のように重いものでした。高校3年生という人生の岐路において、難しい決断だったと思います。門前さんの言葉を聞いて、こんな決意を見せられたら受け入れるしかないですよ。すごいな。でもいい意味で未来が明確になった気もします。本当は気になるけど、ただのファンがそこまで聞くのはおこがましいなと触れられず、漠然とした不安となっていたものにやっと答えが出て、なんだか安心してしまった自分がいました。


 そのままお通夜みたいになるかと思いきや、直後に我妻桃実さん(ぽにょ)がまだ2ヶ月もあると元気いっぱいに場を盛り上げてて、そんな周りに門前亜里さんも笑顔を見せて、そういうハコムス嫌いじゃないですよ。


 自分でもびっくりするほどあっさり受け入れていましたね。以前、『はじまり』での鉄戸門前の演技を観たとき、あまりに素晴らしく芝居の内容そのままに門前亜里さんが卒業しても構わないと書きましたが、今回もまたそんな気持ちになってしまい、だから門前さんの卒業発表もそれほど衝撃を受けなかったのかもしれません。もちろん門前さんが卒業することは悲しい。悲しいけれど、それ以上に『いちご水のグラス』が素晴らしすぎて、公演が終わってもその余韻は長く響き、門前さんが遠くに行ってしまっても仕方ないと思わせるものがありました。そもそも門前さんは別れる役がよく似合います。劇団ハコムスだけでも失恋、卒業、留学と、常に別離を演じています。薄幸とは違うのだけど、身にまとう儚さがそのような役を引きつけるのでしょう。以前、門前さんを闇が眩しいと評しましたが、明るさとは異なる眩さが門前さんにはあります。実際は家族や友人に恵まれ、だからこその優しさ溢れる門前さんになり得たのだと思いますが、でもそこから零れ落ちる陰りが僕は好きで、その儚いイメージ通りにハコムスを卒業していく門前さんに対して、悲しいけれど素敵な別れだなと相反する感情を抱きました。


 この卒業は非常に門前亜里さんらしい、と僕は思います。ごめんなさいね。こういうファンがいるから卒業という決断に傾いたのかもしれません。知り合いに言われましたよ、あなたが推すアイドルはよく辞めると。偶然でしょ、みんなそれぞれ推しの卒業経験あるでしょ、と思ってもやはり引っかかるものがあります。どうなのかな。なんとなくそういう匂いを感じ取って門前さんに惹きつけられたのかもしれませんね。


 ハコムスから門前亜里さんがいなくなるのはとても寂しい。いちばん心細く、寂しく感じているのはメンバー達だろうし、だからこれからの2ヶ月間は充実した時間を過ごしてほしい。温泉バスツアーもオタク連れてかないで彼女達だけで行ってもいいんですよ。門前さんの発表の後、小松もかさんも菅沼もにかさんもしっかりと門前さんの言葉を受けて喋ってて、成長したなと感じたし、残り2ヶ月間でどう結束力が高まっていくのか楽しみでもあります。僕も、門前さんと本当の別れまであと2ヶ月もあるのかという安堵感のほうが大きい。別れるまでに月が2回満ち欠けするんです。2ヶ月は長いですよ。たくさん素敵な情景を見たいし、たくさん笑顔を見たいです。悩むのはここまで。あとは走り抜けましょう。7月にはどうなってるかなー。


 門前亜里さんの卒業発表に悲しくはなったけれど、それよりも『いちご水のグラス』がすごすぎて他がすべて霞んでしまった5月定期公演でした。ありがとう。

私門前亜里から、皆様へ大切なお知らせをさせていただきます。
私は7月の定期公演をもってハコイリムスメを卒業します。


去年の夏に7人が集まり、ハコムスができて
ファンの方に支えてもらいながら少しずつ少しずつ進んできました。
4月からかれんが加わってこれからもっともっと大きくなりたいと思っています。
80年代90年代のアイドルさんの曲をカバーさせていただいて、「懐かしかわいい」という、
癒しとときめきをお届けするハコイリムスメのコンセプトが私は凄く好きで、
もっと沢山の方に知っていただきたいと強く思っていて、頑張ってきました。


それとは別に、私は昔から本を読むのがすごく好きで
きっとわたしが一生興味を持ち続けられるくらい好きなのは、このお仕事をすることと文学のことだけです。
どちらも大好きなことだから、ハコムスが忙しくなる中で、学業との両立をさせようと思っていました。


ずっとこうやってファンの方の前で笑っていたいし、メンバーと練習したり、
喋ったりそういう日々が本当にびっくりするくらい楽しくて、ずっとそうしてたいと思います。
だけど、高校三年生のわたしは、やっぱり自分はどうしなくてはいけないのかを考えました。
そしてハコイリムスメを卒業することを決意しました。


誰かを応援することは簡単なことではないと思います。
それに誰かに応援してもらえることも、人生のうちでめったにあることじゃないと思います。
それをこんなに、たくさんの人に温かく応援をして貰えていた私はとても幸せで、
一生の宝物になるような時間をもらっています。本当に有り難うございます。


私が卒業をしてからも、ハコムスはどんどん大きくなってほしいし、
先へ先へ走って行ってほしいと心から思います。
とても寂しいけれど、私も7月19日、定期公演の日最後まで精一杯駆け抜けるつもりですので
どうかよろしくお願いします。


門前 亜里


門前亜里 卒業のお知らせ | ハコイリムスメ(ハコムス)公式サイト


 いい言葉ですね。









追記
 相変わらず重いし、悲しい悲しい書き過ぎですね……。