ハコイリ♡ムスメ『ハコイリ♡ムスメ定期便11月号~麗しのNovember~』@AKIBAカルチャーズ劇場(20141129)

 微笑みのOctober、天国のバスツアーときて、11月の定期公演です。冬に向かって街の空気は冷たくなる中、ハコムス熱は高まってまいりました。


 今回から始まったのが劇団ハコムス。歌と演技が融合した、女優志望が集まったアイドルグループに相応しい試みです。こういうの待ってました。CDを売ろうとしてTPDが失った演劇精神が今ハコムスに!! というわけです。3組のユニット曲の前にそれぞれの曲のイメージに合った寸劇が入りました。


 鉄戸美桜さんと内山珠希さんの『日曜はダメよ』は珠希さんが恋愛の先輩役として鉄戸さんにアドバイスするストーリーでした。実際もスクールカースト上位で恋愛上級者らしい雰囲気ありまくりの珠希さんなので、恋愛指南の演技にも説得力があります(笑)。実際見たときも笑って、動画でも見る度に笑ってしまうのですが、葉山でデートっていつの時代を想定しているのでしょうか。そんな寸劇からの歌なのですが、僕は大変なことに気付いてしまいました。とても大変なことです。珠希さんの歌声が好きなことに気付いてしまいました(!!)。ハコ推しムスメだったのについに推し変でしょうか。バスツアーで珠希さんのカラオケを聴いていて良いなあとは思っていたのですが、この『日曜はダメよ』で確信しました。珠希さんの歌声が好きです。どこがどうと具体的には表現出来ないんですが、聴いていると落ち着きます。聴きやすい歌声で、ずっと聴いていられます。『日曜はダメよ』も、いつだって恋は女の子のほうがリードしなきゃといった雰囲気が珠希さんともしっくり合っていました。
劇団ハコイリムスメ『日曜はダメよ』(内山珠希・鉄戸美桜) - YouTube


 神岡実希さんと我妻桃実さん(ぽにょ)は体育の授業終わりで繰り広げられる、デリカシーの無い男子に対する女子トーク。背景画がパブリックスクールっぽいのがかなりツボです。理想の男子を言うぽにょの前のめり過ぎな可愛らしさを正面で受け止める神岡さんがただただ羨ましい。ぽにょは表情での表現がとにかくドラマチックですね。それは歌っているときも同じで、表情で歌っていて素晴らしいと思います。


 そして、門前亜里さん小松もかさん菅沼もにかさんは失恋の門前さんを慰めるパジャマトークの劇でした。門前さんが失恋!! 僕も一緒に泣こう!! 失礼ながら門前さんにはそんな恋にさよならを告げられた役がとても似合っているように思いました。この3人の劇は門前さんの独壇場でしたね。目を潤ませながら今の気持ちを吐露する門前さんがどんどん透き通っていきます。自分は演技上手い人を見ると演技上手いなと思いながら見てしまうのですが、メタ的に演技上手いなと思うよりも、もっと純粋な感情で門前さんに強く引き込まれました。そこからの『パジャマでドライブ』なので、歌の世界も鮮やかに伝わってきます。出だしの「朝もやの国道……」の静かな始まり方が好きです。
劇団ハコイリムスメ『パジャマでドライブ』(門前亜里・小松もか・菅沼もにか) - YouTube


 3つとも劇から歌への繋がりが丁寧で、劇が歌の世界観をさらに深く広げていました。劇があることで歌により没入でき、彼女達によって作られた世界の訪問者として聴きいるのは良い体験でした。何か歌を聴く場合、勝手に思い入れとかいろんな物語を裏に重ねて聴くことで特別な体験にしてしまいがちですが、こうやって劇で背景を提示されると別段深い思い入れが無くとも感動できるのかもと、後になってなるほどなあと思い至っています。そういう事前の文脈無しに完結した感動を与えられるところなどとても演劇的ではないでしょうか。しかし、感動を与えるいちばんの原動力は演者の真摯な姿勢であるので、仕組みだけではダメで、今回はハコムスのみなさんが自分達の力を出し切っての演技と歌が素晴らしかったからここまで感動出来たのだと思います。


 ただ、門前さんの涙が零れそうな瞳を見ていると、僕が感動した相手が門前さんではなく、その涙ではと自分を疑ってしまいます。あの涙に惑わされて、しっかりと門前さんの演技を見ていなかったのではないかと不安です。それすらも演技と言われればそうなのですが。泣かれるとこちらは否応無しに心を引き込まれてしまいます。涙の前ではストーリーとかどうでもよくなってしまう。張り詰めた空気の中、ぎりぎりの演技で心を揺さぶられるのが気持ちいいのです。とまあ、そんな安易に涙を見せることに否定的な自分ですが、嫌いかというと大好きです。とても卑しいことですが、女の子が涙を流すほどに透明感を増していく、その姿を見るのが大好きです。もっと見せてよ君の涙。自分でも嫌な嗜好だなと思います。でも、あの話の流れだとしょうがないですよね。門前さん素晴らしかったです。なんかめっちゃ苦言しているように見えちゃいますが、門前さん大好きです。


 難点があるとしたら、今回の劇は台詞を言うときにマイクを通して言うので違和感がすごかった。マイクを持たない演技は難しいのかなー。


 劇団ハコムスの後はカバー新曲です。新曲は11月でクリスマスも近くなってきたということでQlairの『スノーブーツのWish』でした。ハコムスのみなさんの衣装は赤と緑のチェック柄でクリスマスツリー色なのですが、目に浮かんでくるのはホワイトクリスマス。この曲ではイントロや間奏で雪合戦などの小芝居が入っていて、ハコムスらしい柔らかい空気に包まれ、白い風景が広がります。雪の日の朝の静まり返った世界で妖精が遊んでいるような、そんな趣きがありました。途中メンバーが客席に降りてきてお菓子を配り始めて、ひと月間違えたおっちょこちょいの可愛いサンタさんです。僕は神岡実希さんからキャンディーを頂きました。ありがとうございました。


 ハコイリムスメは見る度に好きになっていきます。11月もみなさんの成長している姿が見られて良い公演でした。次も劇団ハコムスに期待しています。もちろんありますよね。もっと先鋭化していって、最終的に歌わなくなってコンテンポラリーダンス始めたり、ポエトリーリーディングしちゃってもいいと思います。門前亜里さんによる『女生徒』を聴きたいです。それでは寝る前に今一度ハコムスの動画を見てから瞼を閉じようと思います。おやすみなさい。