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演劇女子部ミュージカル『LILIUM -リリウム 少女純潔歌劇-』

 すごかった。とにかくすごかった。圧倒的だった。鳥肌立ちっぱなし。そしてひたすら悲しい。
 6月6日、豪雨の金曜日に初めて観たときは、最後のあまりの救いの無さに気持ちがどん底に、帰宅したときは身体もびしょ濡れで、確かに演者の演技や歌、諸々のディテールは鳥肌が立つほど素晴らしいけど、どうしようもない悲しみに包まれるからもう一度観るのはよそうかなと思っていました。でもそれからの日々、ずっと頭の片隅ではリリウムについて絶えず考えるようになってしまったのです。希望のまったく無い悲劇で、苦手なストーリーと言いつつ何故か引き寄せられる思考。最終的に計3回観ましたよ。2回目を観たときは、1回目で気付かなかった点がわかるようになり、より一層すごさを感じて、即決で3回目のチケットを買っていました。1回目の衝撃を2回目の衝撃が上回り、3回目はその上を行く衝撃を受けました。観る度にすごさが増していくリリウム。
 日頃からすごいものを見たい体験したいと思いながら生きています。お金も時間も限られる中、出来る限りすごいものに出会える確率を高めたい。その確率は、自分の好みも考えて舞台、映画、ライブの順かなと思っています。そんな中で今回のリリウムは本当にすごいものに出会えたと震えています。完璧な世界観に完璧な衣装に完璧な歌と踊り。話の内容は苦手だけれど、それも苦にならないほどの熱演。クランという隔離された空間で繰り広げられる少年と少女の悲劇。孤独に生きてきたファルス(工藤遥)の最後の叫びで真っ暗などん底に落とされたかと思えば、それを凌駕するリリー(鞘師里保)の身体仰け反らせる絶叫によって暗闇より暗い漆黒の絶望に包まれる様を目の当たりにすれば、まあ舞台が終わってもぐったりしすぎて席から立ち上がれないですよね。東京千秋楽の最後にスタンディングオベーションするときの腰の重さといったら!!
 話の内容はどこかが書いているでしょう。演出家の過去の作品との関連性もどこかが書いているでしょう。演者全員の感想は他の人に譲ります。僕が書くのは2人だけ。リリウムは本当にみなさん全員素晴らしいのですが、なんといってもファルス役工藤遥さんとマリーゴールド田村芽実さんではないでしょうか。この2人の狂気に満ちた演技が何よりも舞台を崇高なものにしていたと思います。すごかった。例えばファルスがすべてを暴露する場面でイケメンでも初老のおっさんでもいいけどとにかく大人のファルスが出てきて「君達は私の最高傑作だ」と言われてもそれほど衝撃的にはならないと思うんですよ。少年の姿のくどぅーだからその狂気が増しているのです。そんなくどぅーに和田ちょが恋しちゃうのもわかります。惚れ惚れします。ひたすら抑えこんでいた狂気が爆発したファルスの眼球が飛び出るほどギラギラした顔が、3000年生きても尚激昂する熱が残っていたのかと怖さよりも悲しみが先立ちます。そしてリリーを想い詰めてこちらも狂気に陥るマリーゴールドを演じた田村芽実さんもとても素晴らしかったです。何よりもソロで歌った『もう泣かないと決めた』。感動しました。ステージに一人、これこそがミュージカルだという会場中の心を深く震わす歌唱に毎回引き込まれました。田村めいめいが歌うと空気が変わるのです。空気の粒子さえひれ伏して身を縮めるように。とにかくすごいのです。僕にとって今回のミュージカルのすごさの頂点はここ、めいめいのソロだったと思います。と書きつついちばん好きなのはスノウ(和田彩花)・リリー・マリーゴールドの『TRUE OF VAMP』だったりしますが。3人が対峙しながら歌うこの曲の緊張感は息をさせないほどです。サントラを聴いていてもあのシーンを思い出します。スノウといえば、話の流れを知っているからか、2回目はスノウについて気付かされることが多かった。スノウのこの表情、この台詞はこういう背景があったからなのかと2回目以降はより伝わってきてよかったです。すべてを知って諦めるスノウの悲しみも底知れない。あとね、シルベチカ役小田さくらさんの歌もよかったです。好きな歌声です。物語の始まり、青い光を浴びながら歌うシルベチカの、始まりからクライマックスのような、もうこの時点で間違いないという確信を抱かせる歌が本当に素晴らしかったです。どの歌もよかったし、とにかく最初から最後まですごい。初見のとき、観終わっても何も感想が出てこずに、すごいすごいと何度も頭の中で繰り返しながら豪雨に打たれて帰りました。あまりに圧倒されると言葉にならないというか、どこから述べてよいかわからなくなります。とりあえずすごいと。
 話変わってハロプロ研修生大好きっ子としては佐々木莉佳子さんね。くどぅーとは違う凛々しさ。最後のほうのファルスを中心に踊るシーンでの、回転するときの佐々木さんの髪の揺れが最高にかっこいいのです。普段のライブでもかっこいいのですが、リリウムではさらに凛々しく見えるのです。笑わない佐々木さんはジャンヌダルク感あったわ。
 素晴らしいところを挙げようとするとすべて素晴らしいとしか言いようがない。舞台を支えた衣装や照明もよかったです。一人ずつ違う衣装の細やかさ。モノトーンでこれぞ純潔という雰囲気で、特に白いスカートの厚めでしっとりとした生地の空気感が衣擦れの音すらも静謐さを感じさせて、変化の無いクランでの静かな狂気をより強くさせます。照明も光と影の使い方がとても考えられていてうまいです。キャメリアがファルスを刺すシーンの左右の壁への影とかついそちらに目が行ってしまいます。すべてに神経が行き届いていることにため息が出ます。
 謎が散りばめられつつも和やかな前半と打って変わって、後半は笑い皆無のシリアス、絶望の底にフリーフォールです。最後の最後でね、まだ叫ぶのか、まだ叫ぶのかと耳を覆いたくなります。この辛さは関連作のTRUMPを知っている方はもっと辛いと思うのですが、それはおそらくそちらと関係するファルスに対してですよね。でもファルスは最後の様子からするとまだ諦念があって、僕にはその後のリリーのほうがさらに辛い。誰も幸せになれない。何なんだよ。リリウムって何なんだよ!!
 観る度に鳥肌が立つ曲が増えていくのが本当にワクワクして、逆に観る度に心にのしかかってくるものもどんどん重くなるし、もっと観たいもっと観たいと思うのだけど、そう思い始めたときに雨降るクランを舞台にした繭期は終わりを告げるのです。素晴らしい凄まじいミュージカルをありがとうございました。


P.S.
 トークショーでのくどぅーを前にした和田ちょが超可愛かったです。


参考
http://05151101.tumblr.com/post/88240983938/trump-d2
http://sqcch1m0.tumblr.com/post/88178558574/lilium
http://d.hatena.ne.jp/syana22/touch/20140609/p1
http://morningproject.hateblo.jp/entry/2014/06/08/000448
http://ameblo.jp/mugimeshi06/entry-11874850399.html
http://ameblo.jp/mugimeshi06/entry-11878352588.html