劇団ハーベスト冬の特別公演『BREAK!! 〜三者三様3姉妹〜』

 夏の劇団ハーベストが素晴らしかったので楽しみにしていた冬の特別公演。期待通りの面白さでした。今回は3人芝居です。受験組を除く10人から3人が選ばれ、様々な3人組で芝居を演じるという内容でした。
僕が観たのは
25日16時 青山美郷望月瑠菜加藤梨里香
25日19時 山本萌花布施日花梨久保田紗友
28日13時 青山美郷宮武佳央久保田紗友
28日19時 山本萌花高橋紗良加藤梨里香
29日16時 青山美郷宮武佳央加藤梨里香
です。
 どの回もとてもよかったですよ。演者が1人でも変わると舞台の流れ、雰囲気がまったく変わることに3人芝居の面白さが存分に出ていました。演者が異なると立ち位置も異なり、それで演技も有機的に変化していく生き物のような舞台に、何回観ても新しい面白さがありました。回を増す毎にアドリブも練られていって何度も笑いました。そして何よりもこの冬の特別公演が素晴らしかったのは、これまではあまり目立つ役をもらえなかったメンバーが今回はスポットライトを浴びてステージ狭しと演技していたことです。3人芝居ということで3人全員に主役の働きが必要です。全員に長台詞があります。そんな難しい舞台で、みんなしっかり役になりきっていました。本当は全員の感想を書きたいのですが、残念なことに僕は松永ミチルさんと広瀬咲楽さんの回を観ていないので、特に印象に残った点だけを以下に記したいと思います。

  • 長女

 長女は青山美郷さんの長女というよりもお母さんという雰囲気がとても好きでした。こんなお母さんが家でご飯作ってくれたらなと、そんな佇まいで、現在理想のお母さんランキング第1位が青山さんです。口論となるシーンでは、その激しさから山本萌花さんの迫力が一歩抜きん出ていますが、全体を通した長女感、末女に気付かされるシーンの青山さんの表現には引き込まれました。

  • 次女

 次女は全員観られて、なんといっても望月瑠菜さんの不思議な雰囲気が僕は好きでした。ブロードウェイを目指す元気いっぱいな性格というのが基本的な次女役なのですが、そこに望月さん特有の空気感を持ち込んで、ふんわりした膜を舞台を巡らしていたのが面白かったです。もう一度観たいなと投票もしましたが、残念、千秋楽の次女は宮武佳央さんでした。宮武さんも宮武さんらしい猪突猛進っぷりで、特に千秋楽でのスピード感に圧倒されました。あのゆったりした青山さんも宮武さんのスピードに釣られているようでしたね。

  • 末女

 末女は貫禄見せつける加藤梨里香さんはもちろんですが、眼鏡を外すと反則的な可愛さの久保田紗友さんもとてもよかったです。久保田さんは淡々と、しかし感情の発露するシーンでは観ているこちらがびっくりするほどの激しさで迫ってきて、そのギャップにこれまでの経験が活かされているのかなと考えたりもしました。今回、どのシーンがいちばん印象に残っているかと問われれば、久保田さんが近眼で本を近くに寄せながらたどたどしく読む場面でしょうか。朴訥とした朗読が、朴訥だからこそスッと心に入ってきました。


 舞台はもちろん、毎回1時間の舞台の後に約20分のアフタートークを行うのですが、それもとても面白かったです。その中でも特に千秋楽、1年のまとめと来年の抱負を述べたアフタートークが劇団ハーベストの1年を総括するトークとなり素晴らしい内容でした。1人ずつ話していくのですが、望月瑠菜さんがそのイメージに似合わず真面目なことを話したり、宮武佳央さんは今回休んでいるメンバーについて気遣ったりと、よいなあと思う点が多々ありました。そして特に印象に残って忘れられないのが青山美郷さんです。青山さんは喋っているメンバーを見つつも、時折彼女達の声を背景に目の前の空を見つめて思い巡らしているような顔も見せて、その表情の真摯さに胸打たれました。メンバーの言葉に過去を思い出して、いろいろ感慨深くなっているような、そんな青山さんの表情がとてもよくて、しかも感想最後となったその青山さんの言葉からは、劇団を本当に好きでいるのだなとすごく伝わってきて素晴らしかったです。今のままではぬるいと、青山さんが率先して劇団ミーティングを開いて4、5時間も話し合ったとか、劇団に対する想いの強さに感動しました。青山さんは言葉のひとつひとつが本当に真摯ですね。
 今回の公演は下北沢の小さな劇場で行われ、そのアットホームな雰囲気が好きでしたが、そこで繰り広げられる姉妹劇の破天荒ぶりが小屋を爆発させそうでした。3人という少人数でやる舞台で、皆がそれぞれ力を発揮して、どの回も面白いものに仕上げていて、本当に何回観ても面白かったです。次の春が楽しみになりました。今回をさらに上回るような2014年を期待しています。